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開催レポート

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いんぴっとONE 第4回セミナー
「【実演あり】騒音を出さない「サイレント革命」への挑戦!」

2025年3月24日、いんぴっとONE 第4回セミナー「【実演あり】騒音を出さない「サイレント革命」への挑戦!をオンラインにて開催しました。ご視聴いただいた皆様、誠にありがとうございました。

サイレント技術が切り拓く建設業界の課題解決

 『いんぴっとONE』では、経営者やビジネス支援者が交流を深め、ビジネス展開に役立つ情報を共有するコミュニティづくりを目指し、毎月セミナーを開催しています。第4回セミナーでは、工事現場の「音」の問題を解決するサイレントシステムを開発している株式会社丸高工業のサイレントシステムセンターより生配信で開催いたしました。同社の代表取締役、髙木一昌氏から、実演を交えながら建設業界の課題とその解決策についてお話を伺いました。

 インタビューの内容は、IP ePlatにアーカイブ動画として掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

株式会社丸高工業 代表取締役 髙木 一昌氏
聞き手:INPIT知財戦略部 鷲﨑 亮部長

改修専業の建設会社が「サイレントシステム」を開発した理由

 丸高工業は、大正10年(1921年)に漆屋として創業しました。その後、建設業へと事業を転換し、昭和57年に3代目社長・髙木氏が就任した当時は、高度成長期の建築物の大規模改修工事が盛んでした。この状況を背景に、同社は改修工事を専業とする事業展開を進め、多くの実績を積み上げてきました。例えば、武道館の屋根補強や東京タワーの外壁取り換え、高島屋の耐震補強など、東京を代表する建築物の改修工事を数多く手がけています。

 しかし、こうした都心部の改修工事は騒音問題が避けられず、主に人のいない夜間に行われてきました。同社が手掛ける工事の9割が夜間作業だったといいます。
 その一方で、時代の変化に伴い、15年ほど前から徐々に社員の離職が増加し、人材採用にも影響が出始めていました。そこで、「このままでは将来がない。音を静かにできれば夜間工事を昼間に行えるのではないか」という発想が、画期的な「サイレントシステム」開発のきっかけとなったのです。

800以上の作業工程を徹底分析し、消音製品の自社開発に挑戦

 建設工事には、さまざまな作業が存在し、すべての工程で騒音を低減しなければ、根本的な解決には至りません。そこで、まず各工事の作業手順に従い、どの工程でどのような音が発生するのかを徹底的に分析しました。その作業数は800を超え、膨大な工程を対象に音の軽減策を模索したのです。
 この分析に基づき、8年間にわたり仮説と検証を繰り返した結果、3つの解決策が導き出されました。1つ目は、消音工具を使用して打撃音を軽減すること。2つ目は、消音壁を設置して音の伝播を防ぐ方法、そして3つ目はこれらサイレントシステムを用いた工事・工程の計画です。

 消音工具については、元電動工具メーカーのエンジニアを迎え、自社開発に取り組みました。その成果として、15年の歳月をかけて40機種を開発し、そのうち20機種は市場で販売されるに至っています。

 会場では、空気伝播音を低減する防音パネル「サイウォール」、消音ドライバー「サイドライバー」、消音コアドリル「サイコアー」の実演が行われました。

サイウォールで囲んだサイボックスでの遮音実演
サイドライバーを使えば、バリバリというインパクト音がマイルドに
サイコア―は、一般的なコアドリルの刃の厚みより薄くなっている

建設現場に革命を起こすサイレントシステムの特許戦略

 後半は、別の会場に移動し、「サイシンダー工法」を用いたデモンストレーションが実施されました。この工法は厨房の配管コンクリートを破壊する際の振動音を大幅に低減するもので、従来の方法と比較して、打撃による振動がほとんどありません。その結果、静音性に優れ、粉塵の発生も抑えられるため、ビル内テナントの入退去に伴う改修工事にも適用可能です。

打撃せずに解体することができるので、静かに埃を出すことなく作業できる

 デモストレーション後は、高木社長、INPIT知財戦略部の鷲﨑亮部長、および丸高工業の知財戦略や海外展開の支援を担当するINPIT知財戦略エキスパートの井上尚幸氏によるディスカッションが行われました。
 この中で、サイレントシステムに採用されているさまざまな要素技術の多くが単独で特許出願されている点が紹介されました。また、建設会社でありながら自社で工具を開発する際に直面した困難や、メーカーとの共同開発における知財戦略のポイント、さらには建設業界へのサイレントシステムの浸透を目指した取り組みについて詳しく語られました。

株式会社丸高工業 代表取締役 髙木 一昌 氏
INPIT  鷲﨑 亮知財戦略部長
INPIT 井上 尚幸知財戦略エキスパート

 ディスカッション後は、オンラインの視聴者との質疑応答が行われ、社内の知財体制や、知財戦略の立案方法についての質問が寄せられました。

 次回のいんぴっとONE第5回セミナーは、2025年4月25日金曜日にオンラインにて開催する予定です。

セミナー内未回答質問に関するQ&A

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