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開催レポート

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いんぴっとONE 第2回セミナー
「中小企業経営者に聞く!日本最古の靴クリームメーカーが描く未来」

2025年1月24日、いんぴっとONE 第2回セミナー「中小企業経営者に聞く!日本最古の靴クリームメーカーが描く未来」をオンラインにて開催し、92名にご参加いただきました。ご視聴いただいた皆様、誠にありがとうございました。

伝統を守りながら、新たな未来へ歩む事業承継の経営アプローチ

 『いんぴっとONE』では、参加者(中小企業、大学、支援機関等)が相互に交流できるコミュニティの形成を目指し、経営や事業戦略等に役立つ情報をお届けするセミナーを毎月開催しています。第2回となる本セミナーでは、日本最古の靴クリームメーカーである、ライオン靴クリーム本舗 株式会社谷口化学工業所の代表取締役社長 谷口弘武氏をお招きし、伝統を未来へつなぐための経営戦略、知財活用等についてお話を伺いました。

インタビューの内容は、IP ePlatにアーカイブ動画として掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

ライオン靴クリーム本舗 株式会社谷口化学工業所 代表取締役社長 谷口 弘武氏
聞き手:INPIT知財戦略部 鷲﨑亮部長

DXは従業員の理解とタイミングが大事

 谷口氏は大学卒業後にIT企業に入社され、その後、ご実家の事業を承継された際に、IT企業と伝統的な経営体制の間に大きなギャップを感じたそうです。伝統を重視するあまり、効率化が進まず、商品ラインアップも時代に対応できていない、といった課題がありました。

 谷口氏はIT業界での知見を活かして業務の効率化に着手します。当時は別々に管理されていた販売管理と会計、給与のシステムを連携させることで、手入力や印刷の作業を削減しました。ただし、急な改革は従業員からの反発や不安を招くこともあります。谷口氏は、「社員の気持ちに寄り添い、タイミングを見ながら一歩ずつ進めることが大事」と述べています。

入社時の課題

自社の強みと課題を分析し、ブランディングを強化

 次に取り組んだのが情報発信とブランディングの強化です。そのきっかけとなったのは、墨田区の運営する後継者育成ビジネススクール「フロンティアすみだ塾」への入塾でした。塾での学びから、自社の強みと課題を分析し、歴史ある日本最古の靴クリームメーカーとしての信頼性を発信することに決めました。

 さらに、後述のINPIT重点支援で革靴を日用品から嗜好品として捉え直してペルソナ分析を通じてブランディングを行い、靴や革の有名ブランドとコラボレーションすることで認知度向上に取り組みました。また、InstagramやYouTubeによる情報発信に加え、テレビ番組で取材を受けたことで知名度が上がり、社内も協力的な雰囲気へと変わってきたそうです。

ペルソナ分析

未来へつながる海外展開と新規事業への挑戦

 現在は、東南アジアの革靴ブランドと連携してオリジナルのレザーケア製品を開発するなど、海外展開を進めているそうです。「日本の職人による手作り」というイメージが大きなセールスポイントになっており、谷口氏は、「こうして海外で認められるのは先代の方々のおかげです。我々も後継から先代のおかげだと言われるようにがんばりたい」と語っています。

DIY専用木材染料を製造販売

 さらに、新規事業として、スティック型の液体靴クリーム容器を転用したDIY用木材塗料も開発し、製造販売されています。ちなみに、この液体靴クリームも、60年前に同社が日本で初めて開発したそうです。

INPITの重点支援でブランドストーリーを構築

 こうしたブランド力の強化や新商品の開発にはINPITの重点支援も活用されています。重点支援では、弁理士やブランドの専門家とともに、事業目標を達成するためのアクションプランとブランドストーリーを策定しました。また、ブランドストーリーに沿ったメッセージとマンガを作成し、イベントやオンラインショップを通じて配布することでブランドの魅力を伝えています。

ブランドストーリーをマンガ化

未来へ向けて「レザーケア×〇〇」の追求

 新たな挑戦として、レザーケア業界以外への事業展開も模索しているそうです。2024年4月には、デザイナーとコラボレーションし、照明型の靴クリームの作品を制作しました。谷口氏は、「世界で認められるには、多くの方のご支援とアイデアが必要です。今後もチャレンジしていきたい」と意欲を語りました。

ミラノでの出展

 インタビュー後は、オンラインの視聴者との質疑応答が行われ、DXを進める上でのポイントや、役立った支援についての質問が寄せられました。

 次回のいんぴっとONE第3回セミナー・交流会は、2025年2月27日木曜日に東京会場およびオンラインにて開催する予定です。

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